風の時代と楽しむということ

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在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき
医師 坂本 優衣(さかもと ゆい)

風の時代という言葉をご存知でしょうか。西洋占星術で考えられている、時代の捉え方のことです。4、5月にはネット上でも少し話題になりました。地球から見て、木星(希望の星)と土星(責任、課題の星)はだいたい20年の周期で空の上で重なります。2020年12月22日、実際に観察した人も多いようです。

空のどの位置で重なるかが、西洋占星術では重要で、重なった場所にある星座が司るものによってその時代で大切にされる事が変わると考えられています。

だいたい200年の周期で時代は変化しますが、この変わり目が2021年に訪れました。220年続いた土の時代(土を司る星座の時代)が終わり、風の時代(風を司る星座の時代)がやってきました。土の時代への変わり目には産業革命が起こり、それまで工場制手工業だった産業は工場制機械工業へ。土地、機械、家、車…などを「持っている」ことがその時代のステータスであり、「もの」を奪い合いたくさんの戦争が起き、「ものを持っている」ことが「権威、権力」の象徴になっていました。戦後の「夢のマイホーム、マイカー」に憧れたのも(マイホームのプロモーションがあったのも含めて)そういう時代の流れだったのです。

風の時代はどうでしょうか。「もの」を「持つ」ことに価値はあまりなく、むしろ「シェア」できる、「体験」できることに価値があり、「権威、権力」よりも「ファン」の多さが価値になっていきます。土地や人を持っている国家よりも、世界中でサービスを提供する企業の方が力を持ち始めています。こんな時代の流れをなんとなく感じるのではないでしょうか。

さて、土の時代では、「努力」が大事でした。歯を食いしばって努力して仕事して一社で勤め上げれば生活は安泰…それが土の時代でした。しかし風の時代は違います。もう努力だけでは成功しないらしいのです。風の時代で大切なのは、「楽しむこと」、「夢中になること」です。努力しているときの行動量と夢中で楽しんでいるときの行動量は、言わずもがな、夢中でいるときの方が多いですよね。じゃあ遊んでいればいいかというと、それは少し違います。仕事でも、人生をかけてやりたい目標でも、歯を食いしばって頑張って成功する時代は終わりました。楽しんで夢中になれる工夫が必要なんです。これが意外とむずかしい。
 
私自身、それはダメだ、と言い聞かせるのですが、ついつい頑張ってしまいます。

皆さんも頑張りすぎていませんか?

訪問に伺っていてもよく感じるのですが、患者様はご自身の体調が悪くても、「これくらいなら大丈夫」と痛み止めなどを控えたりします。ご家族様は、「これくらいならできるから」とお一人で介護をしたり…。もちろん、お薬の副作用が嫌だから、とか、経済的にサービスは頼めないから、などほかに理由がある場合もあるかと思います。しかし、それ以上に「頑張る」ことにこだわっていたり、「頑張って」いないとダメなのでは、と無意識にご自身を追い詰めていたりしませんか?(私自身が頑張りすぎるところがあるのでそんな風に見えてしまうだけかもしれません。)

介護や最期を、「楽しむ」とまではいかなくても、日々の生活で楽しいと感じられるような瞬間を増えるように工夫してみるのもよいかもしれません。自分はどんな時に楽しいと感じるのか、自分を見つめなおすきっかけにもなるかもしれません。私たちでもお手伝いできる工夫の一つとして、使えるサービスやお薬を使って、患者様もご家族様も負担を減らしていく…といものがあるのかなと感じております。

一緒に工夫して楽しい瞬間を増やせたらいいな、と思います。皆さんも楽しみ方を見つけたら教えてくださいね!

About the Author

坂本優衣

(さかもと ゆい)
在宅療養支援クリニックかえでの風 たま・かわさき 医師

趣味:キャンプ・裁縫
好きな言葉:有言実行

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